夜空は百合の花を狂気的に愛す
第5章 ラベンダー
「しかもね、私についてこない理由はなんだと思う?」
楽しそうに話す鏡夜さんに震える声をバレないように声を絞り出す。
「日本から、離れたくない…とか…」
「普通そう思うだろう?でも、まだ子供のくせに女の子と離れたくないからって言うんだ」
「女の子?」
「ああ。海で遊んでた時に会った子らしくてね、夜も空も帰ってきてはその子の話ばかりしていたよ。その女の子と離れたくないから父親の私とは離れるっていうんだから笑ってしまったよ」
わからない。わからない。
今は鏡夜さんの声が入ってこなかった。
私に言っていたことは全て嘘だった?なんのために?
今日の空くんのことも相まって彼等のことが一層わからなくなる。
私は…
あの子たちと関わっていていいのだろうか
「今はね、私もユリちゃんのお母さんと出会ってあの子たちもユリちゃんと出会うことができて最高に幸せだと思っているよ。」
「は、い…」
「…あの子たちが怖いかい?」
「え?どうして…」
いきなり突拍子もなく、聞かれて目を開く。まるで今の私の心を見透かされているようだった。
「夜も空もね、ユリちゃんのことを気に入っている。見ていてわかるよ。けれど夜も空も執着心が強いんだ」
「どういう、ことですか?」
「お気に入りのものは何がなんでも手放さないってことかな。それでもしユリちゃんが困っていることがあるなら私に言っておくれ」
「いえ…そんなことないです」
「そうか、それならよかった」
本当は今すぐ2人への疑問を聞きたい。
けど家族の関係を変にしたくなくて気を使ってしまう自分に腹が立つ。