夜空は百合の花を狂気的に愛す
第3章 ムラサキツユクサ
「…メールこない。相当落ち込んでるのね」
あの試合から1日経ってもひーくんからメッセが届くことはなかった。
一緒に帰るのも断られちゃったし、帰ってからメールしても全く返ってこない。
結局、ひーくんが何を言いたかったのかも聞けず終いだし…
やっぱり、ひーくんに会いに行こう。
そう思い立ってソファから立ち上がると両隣にいた2人に手首を掴まれた。
「ユリさん、どこ行くの?」
そうニコニコ笑う夜くんの目は笑っているのに笑っていなかった。
怒ってる…?
「ひーくんのとこ行こうと思って。昨日結構落ち込んでたみたいだし、心配なの」
「ユリさん、今日は俺達とデートしてくれるって昨日約束したじゃない」
「そうだけど…2人とはいつでもできるわ。だからまた今度にってできない?ひーくんが心配なの」
確かに昨日の晩、双子がやってきて明日1日デートをしようと誘われたのでいいわよと返事をした。
けどやっぱりひーくんが心配なのよね…
掴まれた手首にぐっと力が入るのを感じた。
「ユリさん、こんなこと言いたくないけどユリさんはちょっとお節介だよ。だって陽向クンからメッセも返ってこないんでしょ?それってつまり放っておいてほしいんだよ。だから今日は俺達と過ごそうよ」
「ユリ、昨日、約束したのに…」
「夜くん、空くん…」
しゅんとする2人に申し訳なくなる。
そうよね、ひーくんだって今は1人でいたいのかもしれない。それに約束を破るなんて私らしくないわ。
せっかく可愛い弟達がデートに誘ってくれたんだもの。楽しもう。
「ごめんなさい、2人とも。デートしましょう。約束したものね」
そう言えば2人が途端に明るくなったので私もつられて笑顔になる。