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僕は君を連れてゆく

第1章 背中

《背中9》

「ここでいいか?」

せんせいは俺を家の近くまで送ってくれた。

降りなきゃ。

「ありがとうございました。」

恥ずかしくて顔が見られない。
膝の上で両手の拳にギュッと力を入れた。
見たいのに。
車内でも、聞きたいこと話したいことたくさんあったのに、言葉にできなかった。

隣で、せんせいが運転してるなんてシチュエーションは想像してなかったから。

「二宮。今日は早く寝るんだぞ?」

「はい。迷惑かけてすみませんでした。」

そう言ったら、俺の拳の上にせんせいの手が重なった。

「背中…見てただろ?いつも、背中に何か感じるなって思ってたんだ。振り向くとそれはなんだか分からなくて…」

「お前だって、二宮だってわかったら俺もお前を見てたよ。振り向けって!」

同じ…俺もそう…

「生徒にこんな感情を持つなんて思わなかったよ」

俺だって…

「二宮。」

「はい。」

「泣くなよ…」

優しい顔。目尻を下げて少し困ったように笑う。

頭を撫で、俺の頬に伝う涙を親指で何度も拭ってくれる。

「やっと、目があったよ」

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