僕は君を連れてゆく
第14章 おおきなかぶ
昔、昔、あるところに二人の老夫婦がいました。
智おじいさんが隣町に住む、ゆうりという
若者から種をもらってきました。
「翔ばぁさんや~」
「は~い!おかえりなさい。」
「これを見てみろ!」
「なんですか?この種は。」
「今日、町へ行ってもらったんじゃ。」
「なんの種ですかね?」
「なんかの、野菜じゃろ。」
「わからないんですか?」
「種と言ったら野菜か果物だろ。」
翔ばぁさんはあきれ顔です。
「これを植えて育ててまた、町へ売りに行けばいいだろ?」
「今日は売れました?」
「ん?」
「野菜。売れました?」
智じぃさんの目が泳いでいます。
これは、売れていないということだと翔ばぁさんはすぐに見抜きました。
「預けた銭、出してください。」
「へ?」
翔ばぁさんの声が少し低くなりました。
「預けたでしょう?今朝。」
智じぃさんは渋々袖から銭を出しました。
「足りませんね。」
「さぁ、飯にしよう?な?」
「おじいさん。足りませんよ?まさか、この種、買ったんじゃないでしょうね?」
ますます、智じぃさんの目が泳ぎます。
そして、小鼻がピクピクと動きます。
「今日はお夕飯はありません!」
智じぃさんは翔ばぁさんに頭が上がらないのです。
「はぁ~」
大きなため息が智じぃさんの口からこぼれました。