テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい


大野さんのアパートから歩いて、駅に向かって
駅からバスに乗った。

すっかりおとなしくなった駅前とは違い、駅から離れるほどお洒落なカフェや公園があって、俺の知ってる街並みではなかった。

「あそこ、チーズケーキうまいんだよ。」

「チーズケーキなんて一人で食べるの?」

「悪いかよ…」

「一人で買いに行くの?」

「だから、悪いかよ!」

「なんか、大野さん変わったね。見た目は全然、変わってないけど…」

「人は変わるよ。俺だって、にのだって。まさきだって。さっきの話だけど、にのはまさきの心は自分から離れていかないと思ってるだろ?」

「離れる?」

「他に好きな人が出来るかもしれないだろ?」

「…」

まさきが俺から離れる。
そんなこと考えたことがなかった。
自惚れてるのはわかっている。
でも、まさきに俺以外に好きな人が…

「例えばだよ。だから、大切にしろってことだ。」

「…」

バスは揺れて走ってる。

みんな、変わっていく。

街も。

大野さんも。

まさきも。

先生も?

俺も?

バスが止まって、数人の人が乗ってきた。
そのなかに杖をついたおばあさんがいた。

俺の前に座っていた女子高生が立ち上がって
席を譲った。

おばあさんは笑顔でお礼を言った。

俺も女子高生も、大野さんもおはあさんも
バスに乗車してる全員が優しい気持ちになった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ