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僕は君を連れてゆく

第15章 会いたい

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白いバラが敷き詰められた祭壇。
その中心にいる先生。

優しく微笑む先生。

祭壇の前にはたくさんの写真が飾られていた。
今まで教師として育ててきたたくさんの生徒たちとの写真だった。

俺はそれを、ただぼっーと見ていた。

いつも俺が見ていた先生がそこにいる。
でも、視線を上げれば白いバラに囲まれた先生。

祭壇には先生の遺品も多くあった。

そこにはあの腕時計があった。

先生の腕時計は親父さんから受け継いだもので
かなり古いものだった。
その腕時計で時間を確認する様が俺は好きだった。

ピアノを弾いたり、タクトを持つ指。
ペンを持ったり、袖を捲ったり…

思い出せばきりがなかった。

込み上げてくる涙を押さえようと上を向いたら、
肩を叩かれた。

振り向いたら一人の女性がいた。

そして、その女性は微笑んだ。

「二宮さんですか?二宮和也さん。」

涙を押さえることはできずに溢れた。

女性は俺の肩に手を置いて背中を擦ってくれた。

そして、白いハンカチで俺の涙を拭った。

「このあと、少しお時間頂けませんか?」

静かにそう言ってもう一度、背中を擦ってくれた。

それからお葬式が終わるまでその女性を見ていた。
親族席の方に座っていて、周囲から“ゆうこさん”と呼ばれていた。

単純に綺麗な人だと思った。







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