僕は君を連れてゆく
第16章 ぶりかえす
「お、俺も恋人みたいって思った。恋人だったらいいなって…」
そう俺が言ったら相葉さんが顔をあげて俺を見た。
「それって…」
驚いた顔をしてた相葉さんは優しく笑った。
「俺と恋人だったらいいなって?」
俺、今、どんな顔してるんだろう。
恥ずかしいよ。
「そういうことだよね?」
姿勢を正した相葉さんが俺を見つめてる。
これって…
そうだよね?
俺は目を閉じた…
「二宮さーん!点滴どうです?」
カーテンの向こうからナースの声がして、
ハッと我に返った。
そうだ、ここは病室だ。
しかも、俺は入院中だ。
何もしてないけど…なんだか、バタバタしたら、
ナースコールを押してしまった。
「あっ!やばっ!」
ピンポーン
「二宮さん、ここにいますから鳴らさなくて大丈夫ですよ~」
クスクスとナースが笑ってる。
「あっ、ごめんなさい。」
相葉さんを見たら声を殺して笑っている。
目尻に涙まで溜めてるし。
「そんな顔しないで、二宮さん。」
俺はいいムードを壊されたこと、
相葉さんに笑われたこと、
何よりもナースが割り込んできたこと、
もう!
もう!
もう!
「口、尖ってるよ!」
って、相葉さんの人差し指が俺の唇に触れた。
「っつ!!!!!」
自分でも分かるくらい顔が赤くなってるはず!
もしかしたら、耳まで!
ニヤリと笑った相葉さん。
「開けますよ?あれ?顔、赤いですよ?また、ぶり返しました?」
この熱は、点滴なんかじゃ治らない。
この熱に、きっと、これからもずっと、
俺は魘されるんだ。
そうでしょ?
相葉さん、あなたという熱に。
【おしまい】