僕は君を連れてゆく
第16章 ぶりかえす
「ほら!食べなって!」
すごい、迷ってる。
食べていいのに…
「じゃぁ、あーん…」
え?
あーん?
俺がするの?
相葉さんに
あーん♡
よし、いくぞ、
「あーん…」
スプーンにチキンを乗せて相葉さんの口へ。
真っ白な歯が見えて、赤い舌が見えた。
「うん、うまいよ!」
モグモグと口を動かす相葉さん。
俺は相葉さんに、あーん をしたスプーンを
見つめる。
だって、だって、なんか、
恋人みたいじゃん?
そして、相葉さんがまた、口を開けた。
今度は茹でてあるニンジンを、あーん した。
「ちょっと、かたい!」
何回、やるのかな?
まさか、このトレーの全部を俺が、あーん、するのかな?
「なんか、恋人みたいだね?」
「へ?」
「俺たち…」
俺は今、どんな顔してるんだろう。
嬉しい、と思っていることをうまく、隠せているだろうか。
どうやったって、口元がムズムズして笑いそうだ。
「ごめん。変なこと言って…」
「ほぇ?」
相葉さんは俺の顔を見た途端に謝ってきた。
「恋人なんて、言われて気持ち悪いよね。ごめん!気にしないで!本当に!」
そんな!
そんなことない!
「そ、そ、そんなことないっ!俺、嬉しいもん!
まさか、お見舞いに来てくれるなんて思ってなくて…」
このままでは、誤解されてしまう!
「仕事の話以外で、いや、仕事の話もしたけど、こうやって、相葉さんと話したいっていつも思ってた。でも、俺から声をかけるなんて出来なくて…」