僕は君を連れてゆく
第17章 共有
涼しくなるかな?と、思って羽織ってきたネルシャツ。
電車内は思ったより空気が籠っていて暑い。
月に1度、電車に乗って隣の隣の町まで来てる。
俺はこの月1度のためにバイトを頑張ってると言っても過言ではないんだ。
背中には大きなリュック。
これはね、ちゃんと、理由があるんだ。
~次は〇〇駅~
車内アナウンスが流れた。
よし、降りるぞ。
一応、周りを確認する。
誰もいない。
俺を知ってる奴は、誰もいない。
駅のホームに降り立ちまっすぐ、改札へ向かう。
改札を出て左に曲がって、いつもいい匂いのする
パン屋の前を通って、階段を降りる。
降りたところにはたこ焼きやがあって、俺が帰る頃には同年代の制服を着たやつらがたむろってる。
横断歩道を渡って、メイン通りではなくて脇道を入る。
通いなれた道。
先月は朝顔のつるは緑だった。
でも、もう枯れてる。
夏が終わる。
古い看板。
引き戸はキィーと、音を立てる。
看板猫とも仲良くなった…
これは、嘘。
俺は猫は苦手。
「いらっしゃい。」
のんびり、という言葉がぴったりな声。
この店はどうやって儲かっているんだろう。
客なんて俺しかいないんじゃないか?
狭い店の中にぎっしり詰まっている漫画たち。
そう。
俺の目的はこの漫画たち。
今日はあの続きを買って…
そんで、あれを…
「あった…」
俺が買う漫画。
それは、男の子×男の子の漫画。
BL漫画と言われるもの。
なんで、この本屋に来てるかというと…
誰にもみつからないように。
わざわざ、隣の隣の町まで来ているのだ。