僕は君を連れてゆく
第17章 共有
なんで、この世界を知ったかというと…
それは、俺がそうだから。
俺の知りたい世界がそこにあったから。
「よし。これでいいや。」
今月は学校行事でバイトに行ける日が少ないから
来月の稼ぎは期待できない。
3冊、選んだ漫画をレジに持っていく。
「はい、どうもね。」
レジにいるおばあちゃんの顔をしっかり見たことはない。
というか、見れないんだ。
相手はおばあちゃんなんだけど、この、漫画をレジに持っていって袋にいれてもらう数分。
ものすごく、長く感じる。
最近は少し、慣れてきたけど。
心臓がドキドキして、それはそれは、放課後、
好きな子の席にそっと、座ってみるとか。
バレンタインの日に下駄箱を開ける朝とか。
それくらい、ドキドキしてるんだ。
まぁ、俺の好きな子は男だし。
バレンタインも…女からもらっても嬉しくないし…
お金を払ってドアを開ける。
毎回、この、キィーという音に体がビクリとする。
誰もいないだろうと店を出たら、誰かにぶつかった。
男?
やばい!!!!
俺は必死に走った。
帰るだけなんだから、あとから考えればあんなに
走ってる方がおかしいのに…
「はぁ、はぁ、はぁ…」
誰とぶつかったんだ?
爽やかな香りがした。
まぁ、いい。
誰もこの町で俺を知ってる奴はいない。
そのためにわざわざ、電車に乗ってるんだから。
大丈夫。
大丈夫だ。
「大丈夫。」
俺は帰りの電車に乗った。