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僕は君を連れてゆく

第18章 涙雨


「フフフ。」

思わず、笑ってしまった。

よくよく、観察してみれば嫌いなものには目を細め唇を尖らせる。

好きなものには、そうでもないと言いながらも口角が自然に上がってるんだ。

「なに、笑ってんのよ。」

「え?笑ってないよ。」

食器洗いを終えたかずがエプロンで手を拭き拭きしている。
俺は食後に飲もうとコーヒーを淹れているところで。

「カップ二つ、だしてくれる?」

「ねぇ、なんで中華屋なのにコーヒーメーカーがあるの?」

「親父さんとお袋さんが飲んでるんだよ。二人で休日に豆を見に行ってさ…」

「へぇ…なんか、いいな…」

二人でコーヒーを飲んで店の戸締まりをして外に出た。

「食べ過ぎちゃった…」

「結構、飲んでたよね?」

「だって、見てられないもん!俺たちがいるってのに…恥ずかしいったらありゃしない…」

かずの後ろを歩いていた俺はかずの手をとって握った。

「ちょっ!やだ!外だよ?」

「いいじゃん!誰もいないよ!」

ぐっと引き寄せて抱き締める。

「恥ずかしくても、やめない!俺が今、かずを抱き締めたいから。ダメ?」

「……」

かずの体の力が抜けた。
俺の体にすっぽりと収まる小さな体。

「俺はかずが好き。かずの笑った顔が好き。」

「俺も…、…き…」

「え?聞こえないよ?」

「耳元でしゃべらないでよ…」

かずの顔はきっと真っ赤。耳まで。
恥ずかしくてきっと、俺の顔をみることが出来ないんだ。




かずの、心に降り続いていた雨は上がったのかな?

俺はいつでも、傘を差し出すことができるように、かずが雨で濡れないようにそばにいる。

「かず…」

「なぁに?」

「帰ろう?」

手を繋いで帰ろう。

遠回りして帰ろう。

寄り道して帰ろう。



【おわり】

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