僕は君を連れてゆく
第21章 シーソーゲーム
潤「ねぇ、大野さん?次の休みどうしようか?」
俺は洗濯物を畳みながら彼氏に声をかけた。
智「う~ん。まかせるよ。」
さして、興味もないのか生返事だ。
潤「この間もそう言ったよ。それで、美術館にしたらつまらなそうだったじゃん!!」
ならこっちだって!
智「なっ!そんな、ことないよっ!あれは、ちょっと体が重くて…」
でたっ!
得意の仮病!
潤「仮病じゃん!」
智「仮病じゃねぇよ!じゃあ、俺が行きたいとこ言ったらそこにしてくれんの?」
潤「それは聞いてみないとわからない。」
智「なんだよ、それ!」
俺の恋人は不貞腐れてソファに沈み混んだ。
こっちが、なんだよ、だよ!
もう、知らない。
俺は部屋に入った。
そして、ヘッドフォンをして音楽を聴くことにした。
もう、知らない。
「う…ん…」
気か付いたら、部屋の中は真っ暗だった。
寝てしまったようだ。
あれ、大野さん…どうしてるかな…
そぅっと、部屋からでて、そぅっと、リビングにつづくドアを開けた。
テレビの音だけが響く室内で、ガラステーブルとソファの間に猫みたいに丸くなって寝ていた。
すぅー、すぅー、という寝息は心地好くて。
手にはスマホを握りしめたまま。
「…ごめん…ね?」
髪を鋤くように撫でた。
「う…ん、」
パチリと開いた目。
合わさった瞳。
さっと起き上がり俺に抱きついてきて。
「じゅん…」
本当に猫みたいだ。
首に回された腕。
合わさる胸。
「ごめん。あんな言い方して…」
「俺こそ、ごめんね。」
顔を見合わして頭を傾けた。
そうしたら、大野さんも反対側に頭を傾けて…
「仲直り…」
「ん…」
唇を合わせる。
柔らかくてでも、少しカサついた。
その唇に潤いを纏わすように口付けた。
「はぁ…ん、」
「く、るしっ…」
チュルっと唇を離したら、俺ら繋ぐ銀色の唾液。
それが、窓から差し込む夕日に照らされて金色に見えた。
「お腹すいたね。」
「うん。」
ケンカしても、すぐに仲直り。
恋なんて、エゴとエゴのシーソーゲーム。
恋なんて、好き、嫌い、大好きのシーソーゲーム。
《おわり》