僕は君を連れてゆく
第4章 春の色
「あの、すみません。ここに行きたいんですけど…」
バス停まで行こうと信号待ちしてたら、声をかけられた。
「ここ…」
俺んちの、近くだ…
「地図書いてもらったんですけどよくわかんなくて…」
確かにここらへんは目立った建物もないからな。
「ここを渡ってすぐの道を左に。そのまま突き当たりまで歩くと玄関に春になるとチューリップがたくさん飾られる家の前を通って…」
「春になると…って、じゃ、今は何が咲いてるんですか?」
少し笑いながら俺に聞いてきた。
「あ…」
めっちゃ、寒いし…
「へっぶしっっっ!!!!」
「最近、昼間は暖かくなってきましたもんね…」
豪快なくしゃみをした俺に淡い黄色のハンカチを差し出してくれた。
「あっ、なんかすいません。」
受け取って口許に当てた。
「いえ。花粉ももう飛んでるのかな?」
そんなことを言われて回りを見渡した。
信号機の足元には紫の小さい花が咲いていて…
彼はしゃがんで、その小さい花をツンツンと触って
「お前は寒くないのか?春なんだな…」
信号が変わって、
「ありがとうございました。行ってみます!」
そう言って小走りに信号を渡っていった。
淡い黄色のハンカチ。
俺の心にも春が来たかも…