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僕は君を連れてゆく

第34章 振り向かないで


少し跳ねてる襟足。

それを眺めるのが好きだった。

黒板に向かってチョークで数式を説明している先生。

夏は半袖のポロシャツから見える力こぶにドキドキしてた。

冬はグレー、ネイビー、ブラックのカーディガンの袖がチョークで汚れてしまうんだ。
なるべく汚れが目立たないようにってベージュのニットを着てきたらピンクのチョークで汚して…
あの時の、照れて笑った顔。

すごく好き。





今日は卒業式



「先生、今までありがとうございました。」

数学準備室に通うのも今日で最後。

最初は授業で使うプリントを取りに来ていたんだけど、授業で先生に当てられたけど間違えて。それを帰りがけに声をかけられてここ、で教えてもらったのがきっかけだった。

数式の覚え間違いが原因で、それを覚えたら簡単だった。
「お前が間違えるなんて変だなって思ってた。」と微笑んで頭を撫でられた。

急に近づいた距離と動かした腕のせいで先生の匂いに俺は包まれて。
体が熱くなった。

その時は熱くなった自分に動揺して冷たくあしらったんだよな。

その日から
先生を見つける度にドキドキしてしまって。

授業も耳に入ってこなくて。

テストもボロボロで。

そのおかげで、また呼び出されたんだけど。

自分の気持ちを認めたら、案外すぐに楽になって開き直って、勉強すると準備室に通い始めた。

丁寧に俺にだけの特別授業。

堪らなく心地好かった。

「先生、これは?」

「これは、先週やったぞ?」

「そうだっけ?もう一回、教えて?」

はぁーと、わざとらしく溜め息をついて。
優しく微笑んで一から教えてくれた。

優しい先生が好き。

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