
僕は君を連れてゆく
第35章 空の色
「大野さん、車、運転出来るんですね。」
「まぁな。」
てっきり、電車とか公共交通機関を使って行くのかと思っていた俺。
部屋を出たら櫻井さんが俺らのアパートの前で車に乗った状態でいた。
櫻井さんから車を借りる約束をしていたらしい。
こんなに用意周到な大野さん、見たことない…
「櫻井さんはここからどうするんですか?」
「あぁ、俺?そろそろ、お迎えが…」
ブロロロロ~
なんだ、あれは!!
サングラスをかけてバイクに跨がった男が。
「潤くん?」
メットをかっこよくとってサングラスを外した。
黒いライダースに黒の皮パン。黒いブーツ。
すげぇ…
しかも、サングラスには俺が写ってる…
テカテカじゃん!
俺に挨拶して櫻井さんにメットを渡してる。
「楽しんで!」
「気をつけて!」
櫻井さんは潤くんの後ろに跨がり、腰に両手を添えた。
ブロロロロ~
「派手だな!」
あの二人、いつの間にあんなに仲良くなってる。
「かっこよかったですね。」
「あ?あぁ、そうだな…行こうぜ!」
大野さんが助手席のドアを開けてくれた。
「…ありがと…」
ドライブなんて想像してなかったから。
いつも眺めてる横顔なのに。
なんだか、もう…
胸がイッパイで静かにゆっくり息を吐く。
どこの温泉だろう。
露天風呂って言ってたな…
一緒に入るのかな…
一緒に…
「ニノ…」
「ん?はい。」
タバコを出した大野さん。
「吸ってください!」
「ありがとう。」
口にタバコを咥えて、左手はハンドルを握ったまま右手でライターを持ちタバコに火をつけた。
「櫻井の車って禁煙かな?」
「知らないですよ!」
まぁ、いいかって。
笑って。
あぁ、もう。
どうしよう。
タバコの匂いが、
大野さんの匂いが
車のなか、イッパイになっていく。
俺はゆっくり息を吸い込んだ。
