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僕は君を連れてゆく

第4章 春の色


「ただいま~」

家のなかはテレビの音しか聞こえてこなくて、あれ?って顔を見合わしてリビングに入ったらソファで頭をくっつけて、寝てる二人がいた。

「寝ちゃったんだ…」

「仲良しだね?」
冷蔵庫に水を入れて手を洗ったら

「最後の一口…」
溶けかかったアイスを俺に差し出した。

「二宮くん食べなよ。」

「大野さん食べて…」

「いや、二宮くんが…「あっ!」」

アイスが溶けて二宮くんの指を滑っていく…

「冷たっ!」

その手を掴みアイスが垂れた指を口に含んだ。

「あ…」

アイスの棒を流しに、投げて手のひらから人指し指まで舐めあげた。

「…ん…ふ…」

そのまま、抱き締めた。

「会ったばかりなんだけど…」

「うん…」

「会ったばかりでこんなこと言うのあれなんだけど…」

「うん…」

身体を離し顔を見る。
「君を…二宮くんを…」

「大野さん?ハンカチ取りに家に行ってもいい?」
今度は抱き締められた。

「うん。来て。」

「ありがとう…」
ギューと抱き締められて俺の首もとに二宮くんが首を預けてきた。

たまらなくなって顔を覗き込んだ。

星の瞳。

君は俺に春を、連れてきた。

そっと、瞳を閉じた君にもう一度、唇を重ねた。

「「アイスの味…」」


すぐそばまで来てる。

あちこちで春が顔を出している。

俺も

俺にも

春が

星の瞳の君に…君の色…君の味…

春のいろ。

◇fin◇

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