僕は君を連れてゆく
第4章 春の色
「俺も一緒に…いいですか?」
「うん。行こう。」
夜の道を誰かと並んで歩くのは久しぶりだった。
「大野さんが言ってた玄関に花が咲く家ってあそこですよね?」
そう指さした先には俺が彼に目印として教えた家があった。
「春じゃないけどなんかの花が咲いてたよ。」
「そうなんだ。あの信号渡ったら俺ん家は右に曲がるからこっちには来ないんだけど…いつか、通ったときにすげぇ、玄関だなって思ったんだよね。」
「それが春だったんだ?」
「多分…」
「多分って…」
夏だったかもしれないってこと?なんて話してたらコンビニに着いて水を持ち、タバコをレジで指定した。後ろにアイスを持った二宮くんがいて
「一緒に買うよ。」
「いや、これくらい自分で買いますよ。」
「遠慮すんなって!お兄さん、それも一緒に。」
会計して店を出た。
タバコに火をつけて吸った。
「ありがとう。大野さん。」
もう袋からだして食べている。
ペロって、アイスを舐める赤い舌に気持ちがザワつく。
「大野さんもどうぞ?」
「いや、いいよ…」
「食べてよ…買ってくれたんだし…」
アイスをズンっと口元に持ってきたから一口かじった。
そのあと、二宮くんが俺が食べたところを上からさらにかじった。
「タバコの味…」
「ん?」
「大野さんの味…」
人気のない道。頼りない街灯が俺たちを照らしている。
前を歩く二宮くんの腕を掴んで振り向いたところで唇を重ねた。
「ん…」
さっき、指で感じた柔らかい感触が俺の唇にあって自分でしかけたキスだけど、ドキドキしてる。
「大野さんの味…する…」
二宮くんはペロリと唇を舐めた。
吸ってたタバコを踏んで火を消して、一つのアイスを分けながら来た道を戻った。