
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
空き缶をビニール袋に放り投げる。
こんなに飲んでバカだ。
気持ちを切り替えたくてシャワー浴びた。
シャワーを浴びてコーヒーを淹れた。
この豆は和也と選んだんだ。
朝のコーヒーだけはなるべく一緒に飲みたい、なんて可愛いことを言ったから。
カップ、ソーサー、コーヒーマシン、豆。
これには金を使ったな。
黄色と紫色のカップ。
紫色のカップに淹れたてのコーヒーを。
それを手にダイニングの椅子に腰かけた。
静かだ。
俺が部署を移動したら、夕飯の時間を一緒にすることが難しくなった。
そして、最近は朝も。
和也はいつも一人でここで…
コーヒーを口に含んだ。
こんなに苦かったっけ?
コーヒーを噛み締めるように飲んだ。
「あつっ…でも、うまい…」
飲み終えて部屋を見渡す。
何もない。
寂しいな…
ピンポーン
間抜けなチャイムが鳴った。
誰だ?
こんな時間に。
なんとなく、アイツだと思った。
今、一番、会いたくない奴。
だけど、会わなきゃいけない奴。
ドアモニターを見た。
やっぱり…
そうだ。
「…櫻井…」
黒のポロシャツにチノパンというラフな服装の櫻井が立っている。
応答するのに躊躇っていたら、また、インターホンが鳴った。
帰れ。と言いたい。
顔も見たくないんだから。
だけど、それだと、負けたような気がして…
解錠ボタンを押した。
「上がってこいよ。」
細く、息を吐いた。
