
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
目を開けたら、潤の背中が見えた。
あの頃は潤の背中ばかり見ていた。
それがとても淋しくて。
でも、今は
「…ん…」
こちらに寝返りをうった潤。
高い鼻だな…
あら?ちょっと肌荒れ?
ここに皺が出来てる…
え?こんなところにホクロなんてあった?
顔中をペタペタ、ツンツンと触る。
潤はね、朝は弱いから。
これくらいじゃ起きな
「こぉーら♡」
「へ?」
「イタズラっ子は誰だ?」
「俺だ?」
こんなに甘い、そわそわしちゃうような朝を迎える日がまた来るなんて。
「今日は?なに食べたい?」
「えー、何でもいいよ。毎日聞かれても困る!」
「じゃぁ、文句言わずに食べてよね!」
「あっ!今日は遅くなるよ!会議の後にもう一件連絡いれたいところがあるんだ!」
「へー。」
「なんだよ!へーって。」
「別に…行ってらっしゃい。」
「なんだよぉ。淋しいのか?」
「別に…」
「ふーん…耳赤いけど?」
「なんだよっ!そうだよっ!淋しいよ!」
「なるべく、早く帰ってくるから。」
「うん…行ってらっしゃい。」
「行ってきます。」
俺たちはまた最初からやり直す。
あの時、手離してしまおうと思ったその手。
届かなかった背中。
潤が泣いたあの日を俺は忘れない。
― 3年後
「和也似なら犬ころみたいで可愛い男の子だな。」
「えっー!潤に似た美人な女の子が欲しいなぁ。」
潤の手が俺のお腹に。
俺はその手に自分の手を重ねた。
「先生、女の子ですか?」
医師「…双子ですね。」
「「えぇぇぇ!!!」」
おわり
