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僕は君を連れてゆく

第38章 いつか王子様が

A said



かったるい古文の授業が終わった。
腕を伸ばしつつ凝り固まった体を左右に揺らす。

「だりぃ~」

これで今日は終わりだからみんな早々に帰り支度をして教室のドアから出ていく。

「相葉!また、明日な~」

クラスメイトに声をかけられそれに返事をしながらスマホをチェックする。

“待ってる。”

いつもこの一言だけ。

この一言をみるだけで自分の顔が緩むのを感じる。

やべぇ、やべぇ。
まだ、みんないるから気を付けないと。

リュックを背負い席を立ったら、クラスの女子に
呼ばれた。

「相葉くん。提出してないの、相葉くんだけなんだけど。」

腕を組み仁王立ちで、この顔は軽く怒ってそうだな。
しかも、提出するの忘れててまだ書いてないし…

「あっ、マジ?ごめん!じゃぁ、俺が最後なら俺が先生に出して帰るよ。それでいい?」

女子は先生に出して帰ると言った途端に態度を変え、帰った。

女は怒らせると怖いからね。
母ちゃんも姉ちゃんもそうだからな。
気を付けないと…

にしても…めんどくさいな。
ニノ待ってんのに。
ニノも待たすと怖いんだから…

それに…
進路なんてまだきちんて考えていない。

俺は机に座り直して、リュックを下ろし筆箱を取り出した。
シャーペンを出してカチカチとノックした。

けど…

気がついたらへんな犬みたいな絵が…

進路か…

大学なんてな…



結婚。

結婚ならいいかも。

「ニノ…嫁に来ないかな…」

進路希望の調査表の第一志望の欄にシャーペンを滑らせる。

「…これしか、浮かばない。」


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