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僕は君を連れてゆく

第41章 理由

Jun


「心マだっ!」

「はいっ!」

屋外でマンションの配線の取り付けをしていたが、強風にあおられ足場が崩れ五階の高さから落下した男性。

頭部の外傷は思ったよりも酷くないが、呼吸状態が良くない。

「やめて。」

研修医に心臓マッサージをさせる。

「先生!心拍、戻りません!」

「ガス取ろう。未血、生化も。エコーは?挿管するよ。」

この男性患者を取り巻く、スタッフは俺の声で動く。

「管入れますね。早く、ガス取れっ!」

「はいっ!」

「ガス取れたら、CT行くぞ!」

「先生、血圧下がってます。」

首か…肋骨が刺さった…いや、骨盤骨折か…

ただ、落ちて体を打ちつけただけならこんなに早く、呼吸状態が悪化して血圧まで下がることはない。

コールが鳴る。

『50代、女性。買い物途中に胸が痛いと訴え救急車要請。〇〇病院、〇〇医院に受け入れを拒否されています。』

「先生、どうしますか?」

「渡海先生は?」

「まだ、オペに入ってます。」

「先生、サチュレーション上がりません!」

「無理ですよ!この人だって、まだ、呼吸状態安定してないのに…」

「心臓なら時間の勝負だ。受け入れろ!」

「…はい…」


2時間後。

「先生、〇〇さん、ICUに送ります。」

「頼む。」

「先生、∇∇さんは?」

「渡海先生の病棟へ。」

足場が崩れ落下した男性はCTを撮る前にエコーを行ったら、腹腔内に大量に出血していることがわかった。

開腹したら、折れた骨盤が腹部大動脈を傷付けていた。
止血しながら、輸血を行いなんとか、一命はとりとめた。

そして、胸の痛みを訴えた女性は、心臓外科医の渡海先生に診てもらうことが一番だと思っていたが、オペ中で手が離せず。

受け入れたんだから、救命医である自分で診た。

心筋梗塞だった。

すでに2つの病院から受け入れを拒否されていたから心臓はすでに力尽きそうだったが、なんとか持ち直した。

「ふぅ。」

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