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僕は君を連れてゆく

第41章 理由

Jun


どんなに疲れていても、翔はここに帰ってくる。

ベッドで眠る翔はとんでもない色気を放っていて。

「もう無理って…じゃぁ、なんか着て寝ろよ…」

水を取りにベッドから出たら、翔はすでに夢の世界にいた。

俺も少し、眠ろうと翔の隣に入り込む。

頭の下に右腕を差し込み引き寄せる。

俺の胸の上に腕を回す。

抱きしめるように、翔の香りを吸い込みながら、
俺も夢の世界へ。









全てのことに理由があるのなら、俺が救命医になったこと、この病院を選んだこと、翔と出会ったことにも理由がある。

今、その理由が分からなくても、明日になれば誰かが、教えてくれるかもしれない。

勉強していたら、分かるかもしれない。

何も無駄なことなんてない。

無駄なことになったのなら、それは自身が無駄にした結果だ。

出会えたことに感謝を。

愛することに喜びを。

いつまでも、明日への希望を。

届けていけたら。

悲しみも苦しみも誰かと分かち合うことで半分になるから。

振り返ることはしても、立ち止まらない。


翔。


いつまでも、ここに。







おわり


*この病院は架空のものです。

患者の容態はその時の状態で様々で予後もここにあるのが全てではありません。

人工呼吸器を外す、という場面がありましたが
担当医一人で決定するのもではなく、ナースやレントゲン技師、呼吸器外科の医師など多くのスタッフと相談すると考えます。
外すことでのメリット、外すことでのデメリットを家族に説明し、最終的な判断は家族、患者本人が行うものだと。

その判断に必要な材料を、医療者が与えることも治療のひとつだと私は思っています。






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