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僕は君を連れてゆく

第42章 MJ倶ラブ

そのbarをみつけたのはたまたまだった。



まだまだ、残暑が厳しくてアスファルトの上にいるとジワリと額に汗がにじむ。


帰りたいけど、帰りたくない。


帰っても誰もいないし。


つい先日、妻は子供を連れて出ていった。


机に紙切れ一枚残して。


ローンで買ったマンションは欠陥が見つかって、
全然、買い手がつかない。

「くっそ…」


ここ数日、暑さのせいもあってイライラするし。

仕事は、まぁ、それなりだけど。

何年いても給料は上がらない。

今日も後輩のミスをカバーして自分の仕事を後回しにしたら、残業で、終電を逃した。

ここからタクシーで帰ったらいくらだ?

ワンメーターは超えるな

でも、30分で帰るからな。

財布を出して中身を見て、やっぱりため息が。

ATMは手数料取られるし…

みみっちい?

そりゃね…ケチりたくもなるよ。


トボトボと足をひきずるように歩く。


ふと頭をあげたら目の前に木目調の重厚そうなドア。


「なんだここ…」

新しく出来たのか?

こんなとこ気がつかなかったな

そのドアに引き寄せられるように近づいて

重いドアを開けた。



足元を照らすオレンジのライトがある程度で

この先に何があるのか見えない。

でも何かいい香りがしてくる。


気がつくと鞄を胸に抱き締めながら歩いている。


足元に気をとられながら歩いていたら、天井にも照明が。


「お待ちしておりました。」



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