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僕は君を連れてゆく

第42章 MJ倶ラブ


頭をあげたらカウンターの中に一人の男性が。

「どうぞ。」

髪はオールバックに整えてあって、ハッキリした眉毛に長い睫毛に縁取られた目。

白いシャツを腕捲りしてる。

「あ、あのここは…」

財布に気持ち程度のお金しか入ってないし。

すごく高級そうで、怖じ気づく。


「ようこそ、MJ倶ラブへ」


そう言われて同僚たちが話してるのを思い出した。

すっごくイケメンなマスターがいるbarがあって、マスターが気に入った人しか中に入れない。

「あの、俺、金ないし…帰ります…」

「一杯だけ、どうですか?」

威圧的に言われたわけでもないのに、足が動かない。

この人が作るお酒を飲みたいっても事実で。

「じゃ、じゃぁ一杯だけ…」

「良かった」


長いカウンターの中央に座る。

カウンターに椅子が5つ。

テーブルとソファーの席は2つ。

相手の表情がわかる程度の照明で手元はあまり見えない。

カウンターの奥はマスターしかいなくて。

お酒がところ狭しと並べられている。

「なにか、食べますか?」

「いや、金ないんで…」

「じゃぁ、私も食べるから一緒にどうですか?」

「でも…」

「一人で夕飯だって思ってたから、貴方が来てくれて嬉しいんです。」

「そう…ですか?」

マスターはそう言って右の口角を少し上げた。

店の雰囲気なのか、マスターの雰囲気なのか。

なんの香りだろう…

ただ座ってるだけなのに、もう…






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