僕は君を連れてゆく
第43章 仰せのままに
まるで、おとぎ話にでも、でてきそうな大きなお屋敷でのこと。
満天の星空のある夜、それはそれは可愛らしい赤ちゃんが誕生しました。
出産を終えたばかりの、女王さまは、疲れきった声でたずねました。
「…………どちらでしたか?」
「おめでとうございます! 潤わしい王子さまにございます!」
出産の手助けをしていた、世話役が、真っ白なおくるみに包まれた赤ん坊を、女王さまに見せました。
女王さまは、さっと顔色をかえ、キッパリと
「……………ダメ」
と、首を振りました。
「この子には、後継者争いにまきこまれてほしくない」
既に六人の王子がいる女王さまは、今度こそ女の子が欲しかったのです。
「この子は、姫として育てます。王にも、産まれたのは姫だと伝えなさい……………」
これは、私とあなたとの秘密ですよ。
きっぱりと告げられた言葉に、赤ん坊を抱いた世話役は軽く息を飲みました。
性別を詐称しろと。
王に嘘をつけ、と。
こんなことばれたら、即刻首をはねられるでしょう。
でも、女王さまの命令は絶対です。
……共犯者になれとおっしゃるならば。
世話役は、小さく「はい」と、答えました。
「では……………お名前はどうなさいますか」
「名前……………そうね。もう決めてるの」
女王さまは、少し目を閉じて、ゆっくりと微笑みました。
「ジュンコ。……いい名でしょう?」
「承知……………いたしました」
世話役が、そっと目をやると、赤ちゃんは世話役の人差し指をそっと握りました。
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