僕は君を連れてゆく
第43章 仰せのままに
男の子として生まれたけれど、女の子として育てられたジュンコ姫はそれは、それは美しい姫へと成長しました。
年頃の姫に一目会いたいと隣国の王子たちからの申し出はあとをたちません。
そんな、姫はお部屋で何か悩んでいるようです。
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「ショウ!ショウ!」
俺はイライラしてた。
「お呼びでございますか?姫。」
今朝、王からお使いを頼まれた。
それは、あきの國のあき姫の誕生日会への出席で。
そのためにドレスをこしらえるようにと。
「ショウから言ってくれよ。もうドレスなんかいらないって!」
俺は、部屋の角にあるドアを指差す。
そこはドレスの部屋で三畳ほどの部屋はドレスやら帽子やらバックやらでうめ尽くされている。
「ドレスなんかよりも、乗馬のときのブーツを作りたいんだけど。」
そう言って俺は愛馬であるkazama の鞭を振り下ろした。
ピシャッ!と床を打つ音が部屋に響く。
「姫、部屋の中で鞭を振り回すのはいかがなものかと…」
そんな俺の気持ちなんか知らないショウは今日も静かに淡々と俺のそばにいる。
「あきの國のあき姫とは昔、姫がお庭で粗相したとき…」
「分かってるって!その話、しないでっ!」
あき姫は、俺らより少し年上で俺にはお兄さんしかいないから本当のお姉さんのように面倒をみてくれたんだ。
だから、お誕生日会だって出たいけど。
でもさ。
「じゃぁ、ショウと行く。」
「それは、王の許可を頂かないと…」
「……」
だって、あき姫との思い出もたくさんあるけど、
ショウとの思い出だってたくさんある。
俺が10才になったときショウは俺の世話役になった。
周りが俺を“姫”と呼んでもショウだけは“ジュン”って呼んでくれてて。
それなのに…
「姫、足を閉じてください。」
ねぇ、ショウ。
“ジュン”って呼んでよ。
ねぇ、ショウ。
俺を好きでしょ?