僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
「帰ろうぜぇ」
帰りのHRが終わり、リュックを背負い声をかける。
「待って、今日、部活に顔出さないと」
「んなの、いいじゃん!」
いつも、おどおどしてて俺のあとをついてくるのは雅紀だ。
「でも…単位が…」
「お前さ…単位って授業に出てればもらえるやつだろ?」
「だって、かずと俺は違うから」
「ニノ~、帰ろ~」
「ほら?みんな待ってるし、行こうぜ?」
鞄を持ってるから帰りたい気持ちはあるらしい。
だけど、自分じゃ何も決められない。
「じゃぁ、待ってるから行ってこいよ」
「でも、それじゃ…かずが…」
「俺も部活に顔だしてくるからさ」
「う、うん…ありがと…」
雅紀は鞄を両手に抱いてそそくさと教室から出ていった。
「ってことだから、わりぃな」
「お前、なんであんなのとつるんでんの?」
潤の言葉にみんなが、なんで?とか、帰ろうぜとか、口にした。
「相葉、まだ、発情期きてないんだろ?」
「俺たちとは違うんだぜ?」
そう、俺は“α”で、雅紀は“Ω”なんだ。
この国は、中学生になるときに採血などの身体検査が行われる。
それで、自分がどれに分類されるのか、知る。
雅紀は昔から頭が良くて、かなりの努力家だ。
そんな雅紀にΩの通知がきたとき、俺はもちろん、雅紀の両親はかなり驚いていた。
だけど、元々、優秀だから俺たちと同じ高校に入学することができたんだ。
優秀で顔も悪くないんだから、堂々としてればいいのに。
雅紀は一言で言えば、辛気臭い感じだった。
俺たちとは違う、そうみんなが言うたびにそんなことを言われる雅紀がかわいそうで、かわいそうで仕方なかった。
だから、俺がそばにいてやらないと。