僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
「じゃぁ、お先な~」
潤たちがそろって教室から出ていく。
その背中をボッーと見つめていた。
部活だって、俺は出なくたってなんの問題もないけど、雅紀はきちんと部活動にも委員会活動にも取り組まなければ高校を出てからの先の選択肢が狭められてしまう。
「せめて、βならな…」
雅紀の親は、Ωと通知がきたときも毅然としてた。
戸惑う雅紀の肩を優しく抱いていた。
βなら、普通の生活が出来る。
普通に嫁さんもらって、子供を作って…
…
…
…
なにも浮かばない。
雅紀の隣に寄り添う誰かの姿が。
誰かとの、子供を抱く雅紀を。
「変なの…」
昨日、あまり、眠れなかったからか。
頭が働かない。
そうだ。
きっと、そうだ。
机に頭をのせて、目を閉じる。
誰もいない教室には校庭から部活に励むみんなの声が届いてくる。
雅紀はバスケ部だから体育館なんだ。
だから、ここに雅紀の声は聞こえない。
俺も、いつか、誰かと番(ツガイ)という関係を結ぶのだろうか。
好き
愛してる
という感情よりも強く、惹かれ合うという。
αの本能が強く求めるという。
どんな人なんだろう。
…
…
…
雅紀が隣にいる。
優しく慈愛に満ちたその顔。
俺と雅紀の間を繋ぐ小さい手。
俺は雅紀と同じ顔で雅紀を見つめてる。
「いや、いや…なんで…」
教室のドアが開いた。
「かずっ!」
「お、おっせぇよ!」
今まで、知らなかったこのざわざわする気持ち。
雅紀を見て、こんなに息が詰まるような気持ち。
「明日また、病院だね」
「そうだな…」