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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

普通、高校二年生にもなればヒートと言われる発情期が訪れる。

だけど、雅紀にそれは訪れない。

そして、俺も。

αでも、Ωがヒートの時に発する匂いに興奮して
ヒートを起こす。

だけど、俺にはそれが訪れない。

この間も雅紀と買い物に出掛けたときに、周りの奴等がソワソワしてるのに気がついて。

よく、辺りを見渡したら抑制剤を飲み忘れた奴がヒートを起こして座り込んでいたんだ。

雅紀が優しく声をかけて自分の抑制剤を飲ましてやったんだ。

雅紀はいつも、鞄にピルケースを入れていた。

いつか、起こるヒートのために。

それは、雅紀の親が雅紀を守るために強く言っていたこと。

自分の身体を守るためにきちんと飲むのよって。

だけど、俺たちは周りの大人たちがソワソワしてるのにそのヒートの発する匂いになんの興奮もしなかった。

だから、みんなが心配して病院で、みてもらっていた。

ヒートにも、個人差はあった。

検査を行う前にヒートを起こす人間だっている。

だから、俺はなんとも思わなかった。

ヒートを起こしてる人間は、本当に人間なのか?と疑問に思うくらい、狂ってるやつがいるから。

相手の意思なんて関係なく貪りつくハイエナのような人間をみてきたから。

俺は自分がそうではなくて、きちんと、理性の働く人間で選ばれし者なんだ、と。




朝から母親と雅紀、雅紀の母さんと並んで病院へ向かう。

母さんたちは思春期に起こるはずの身体の変化が訪れない俺たちを心配してあーでも、こーでも、よく、
口が動いていた。

「雅紀の番が和くんだったら、いいのにね」

「やめろって、マジで」

これは、雅紀がΩと分かってから雅紀の家族が口にする言葉。

雅紀は、いつも、そんなのあり得ないって言うんだ。



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