僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
「俺、運命の番なんていないって思ってて…だって、俺はかずと一緒になると思ってたから。それなのに、俺もかずもΩじゃ一緒になんていられないだろう。だけど、俺がαだってわかって、かずはΩで…
やっぱり、そうだって。これでかずと一緒になれるって思った。かずには悪いけど嬉しかったんだ」
雅紀はαなのに、二年以上抑制剤を内服していた。
それで、ホルモンのバランスが崩れてしまってるそうだ。
射精出来ても、精子に生殖能力があるかはわからないらしい。
それでも、あの日、俺にきた発情期。
「かずから発する匂いにすごく興奮した。でも、みんなそうだった。みんなが興奮してて…あんな目でみんなに見られてかずは俺って分かってるのかな?って。そんなかずに触れてもむなしくなるだけだって思って、触れなかった」
苦しかったよね、ごめん。と言われた。
つまり、発情期がきてる俺に正確な判断は出来ないと。
「それって…どういうこと?」
「かず、俺が好き?」
「……雅紀は?雅紀は俺のことどう思ってるの?」
「好きだよ、ずっと、ずっと、かずだけ」
冷たい目で雅紀に見つめられて、俺はこのまま
知らない誰かに抱かれて、これから、毎月訪れるヒートをやり過ごさないといけないんだと、絶望していた。
そして、実際に俺にきたヒート。
俺に触れない雅紀に、やはり、そうなんだと。
αとなった雅紀に見合う人間は俺じゃなかったんだとショックをうけていた。
雅紀を思いだしながら繰り返し、繰り返し吐き出した欲。
むなしさ、やるせなさがこのままずっと続くんだと。
「俺だって、ずっと、雅紀だけだよ」
雅紀の顔はしわくちゃで。
「見せてやりたい、俺のここ。かずがいっぱいなんだ」
胸に手をあて涙を流す雅紀。
俺らにはこれからも乗り越えなくてはならないことがたくさんある。
きちんと、俺たちは体を繋げることが出来るのか。
雅紀も俺も人より、ヒートがくるのが遅かったからきちんと生殖能力があるのか。
色んなことを考えていかなきゃならない。
だけど、目の前で嬉しいと泣いてくれる雅紀を見てると、胸がいっぱいになってくる。
俺のここだってみせてやりたい。
雅紀が、ただ、ただ、愛しい。
おわり