僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
あの日、雅紀とキスした日。
それは、初めて俺に訪れたヒートだった。
あのまま、雅紀の目の前で自慰を繰り返した俺は
気がついたら意識を失っていた。
次に起きたときは保健室のベットの上だった。
それから、一週間、悶々する体と共に過ごした。
誰かに触ってほしい、と思う自分に引いた。
雅紀に、雅紀だけ、なんて思っていたのに
ヒートを起こせばそんなことはどうてもよくて、
誰でもいい、と思うんだ…と。
家のベットのなかで、雅紀にされたキスを思い出しながら何度も、何度も欲を吐き出した。
「かず、雅紀くん来てるよ、どうする?」
休んでる間、雅紀は授業のノートをとってくれたりプリントなどを持ってきてくれる。
「会う」
階段をのぼる足音にドキドキする。
ゆっくりと開いたドア。
顔を覗かせた雅紀。
ヒートは去ったはずなのに雅紀の唇を見ただけで
体が熱くなる。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう」
「これ、来週テストあるって…」
「そうなんだ…」
「………」
「………」
「かず~」
ドアの前に母さんがいて、俺と雅紀におやつと紅茶を持ってきてくれた。
「早く、行けよ」
「なんで、そんな怒ってんの?雅紀くん。ゆっくりしてってね」
雅紀に優しく声をかけて母さんはまた階段を降りていった。
母さんが持ってきてくれた紅茶を飲んで、おやつを口にいれた。
何を話したらいいんだろう。
「かず、似てきたね…お母さんに」
「え?」
俺を見る雅紀は優しい顔をしてる。
「俺、かずがΩだってわかった時、すごくショックだったんだ」
雅紀も俺と同じように悩んでいた。
周りのみんなは発情期が訪れているのに、何も変化がないと。
どこか病気なのかもしれないと。
雅紀が、自分で病院で調べてもらいたいと言ったそうだ。
雅紀は俺なんかより、ずっと、いろんなことを考えていた。