僕は君を連れてゆく
第48章 ゆく年くる年
「あぁ~、やっと二人きり」
こんなことだろうと思った。
ドアの鍵をしっかり閉めた相葉さんは俺の背中から抱き締めてきた。
「……」
俺の襟足に鼻を寄せすぅーと息を吸ってる。
「にのぉ~♡」
甘えてくるこの声。
悪くない。
毎年、毎年思う。
こうやって、甘えてくるこの人のそばに来年もいられるのだろうか、と。
「今年も終わるね」
「うん」
こうやって、甘えてくるのは俺だけにしてほしい、と。
「カウントダウン、楽しみだね」
「そうね」
「去年はニノいなくて寂しかったから」
「俺も」
こうやって、俺が素直になれちゃうのはあなただけなんだ。
「ニノも寂しかったの?」
「うん」
「そっかぁ。じゃぁ、今年は寂しくないね」
「それ言ったら翔ちゃんに失礼よ」
こうやって、バカ笑いしながらまた年をとっていく。
「今年も、たくさん、ありがとね」
「うん」
俺の正面に立ち肩に手を置きまっすぐに俺を見る。
少しだけ、目線を上にずらして目を合わせる。
「ニノがいたから俺、頑張れた」
「よく、頑張りました」
「ニノも、よく頑張りました」
「ありがと」
そっと、目を閉じる。
触れた唇は少しカサついてて。
「よし!充電、完了!」
「足んねぇよ?」
グイっと腕を引っ張りもう一度、唇を重ねる。
カサついた唇を潤すように、舌でなぞっていく。
「んっ、」
「ぅん、」
クチュっと音を立てて唇を離す。
「満足した?」
「足んねぇよ」
「今日の夜ね?」
あなたといる幸せ。
あなたがいる幸せ。
「行こっか?」
繋いでいた手にギュっと力を入れて目を合わせて。
さぁ、大舞台が待ってる。
【おわり】