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僕は君を連れてゆく

第50章 こんなにも

今でも忘れられない人がいる




「翔くん、いつか僕をお嫁さんにしてね?」

「智くん?僕がお嫁さんになるんだよ」

「なんで?僕、白いウエディングドレス着たいもん」

「僕だって、着たいもん」

「じゃぁ?どうしようか」

「二人で着ればいいんじゃない?」

「翔くん!頭いい!」

「えへへ、じゃぁ、約束ね?」

「うん、約束」









懐かしい夢を見た


それは、それは、遠い昔。
俺らがまだ、仲良しだった頃。
アイツの家の庭にある柿ノ木の下で指切りしたんだ。

アイツはいつもそうだった。
俺のことを頭がいい、カッコいいって毎日、毎日
誉めてくれて。
こっちが恥ずかしくなるくらいに。
心の底から、そう思ってることがアイツの瞳を見れば伝わってきた。

俺はアイツに、そう言われたいから
勉強を頑張ったんだ。
知らないことはすぐに調べて。
分からないことを教えてあげて。





でも、いつからか、俺たちは一緒にいることが出来なくなった。

Ωである俺たちは稀少な性別でαの人間と番(ツガイ)になり、子孫を残さなくてはならない。

こんなに近くにいるのに、俺たちは
昔の約束なんてなかったみたいに暮らしてる。




なぁ、智。
俺はさ、俺は、まだ智のことが…







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