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僕は君を連れてゆく

第7章 桜の色

◇◇◇◇◇◇◇◇

信号で待ち合わせをした。

「ニノっ!」

振り返ると…

「待った?」

「ううん。早くいこう‼」

あの日、大野さんにキスをされて、告白されて…

それから何度かデートを重ねてきた。

会えば、会うほど。

知れば、知るほど、どんどん大野さんが好きになる。

「あそこの橋の下があんなに桜が咲くなんて俺、知らなかったよ。」

橋を渡っていたらタバコを吸いながら大野さんが橋の下を覗いている。

木から木へと提灯が並び夜の空に浮かび上がるピンクは幻想的だった。

橋に腰掛けて大野さんを見つめた。

俺と同じ猫背な背中。

俺と違って長くて綺麗な指。

そこから立ち上がる細いタバコの煙。

あんなに苦手だったタバコの香り。

今ではおなじタバコを吸ってる人がいたら親近感までもってしまう。

俺ってこんなに単純なヤツだったんだな。

「ニノ。」

その猫背な背中を追いかけた。

橋の下に降りたらまだ、満開には及ばないけど見応えは十分なくらいに咲いていた。

「これ、満開で休みならすげぇ人なんだろうな。」

「桜見に来てるのか人見に来てるのかわかんないやつね。」

たくさん人がいるだろうと思っていたけどそうでもなくて…

ちょっと、拍子抜け…

「ニノ。」

右手に持っていたタバコは左手へ移動していて、右手で俺の左手を握っていた。

見かけによらず案外、男らしくて。

そんなところがやっぱり好きなんだ。

そのまま手を繋いで少し歩いた。

人がまばらになってベンチが見えてきた。

「少し座ろ?」

出店もでてなくて、川の流れる音が静かに聞こえる。

「あの日の夜も静かだったよな。」

タバコを、足で潰してる。

そうだ。

あの日もすごく静かだった。

キスされた…

そんなことを思い出して恥ずかしくなった。


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