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僕は君を連れてゆく

第53章 ミモザイエロー


「俺さ、和を好きになって、恋人になって…それから、ずっと舞い上がってんだよ」

雅紀が巻いてくれたマフラーに顔をうずめる。

「手を握りたい、キスしたい、抱き締めたいって…そんなことばかり考えちゃう…もし、もし、それが、女の子として扱われてるって思うのなら、」

「ごめんっ!!!」

雅紀の体を俺の腕の中に引き寄せた。

俺の荷物を持ってくれたり、夜出掛ければ迎えに来てくれる。

分かってたんだ。

俺らが男同士で、
どんだけ、想いあっているか。

雅紀が、
どれだけ、俺を大切にしてくれているのか。

「別れたいのか?なんて、聞いてごめん、そんなことこれっぽっちも思ってない、別れるなんて絶対に嫌だっ!」

大切にされている、その優しさを、まっすぐに受け止めていれば雅紀に別れようなんて言葉を言わせないですんだのに。

女になんてなれるはずないのに。

俺だって、雅紀を大切に想ってる。

雅紀の想いも、俺と同じはずなのに。

「俺も…別れたくない」

俺の胸が雅紀の涙で濡れる。

深夜の駅に続く道に俺と雅紀の鼻をすする音が響く。

「和…愛してる」

「俺も…雅紀だけなんだ」

抱き合う俺らを酔ったサラリーマン達がからかう。

「…ムードねぇな…」

「うん…」

二人で目を合わせたら笑いが込み上げてきて二人で大声で笑った。

「ん、」

抱き合う体を離して手を繋ごうと手を差し出す。

雅紀の左手が俺の右手を握ってくれた。

「帰ろう?」

「うん」


ただ、俺と雅紀を信じていくしかない。

誰が、何を言おうが。

自分を信じて。

「和…」

「ん?」

「っ!好きだーーーーーーー」

「えっ!?ちょっ!!??」

「大好きだーーーーーーー」

「やめろっ!バカっ!」

静かな雨上がりの空に響く、俺への愛の言葉。

「ほら、和も言って!」

「やだよ、バカ!」

「なんでよ~、聞きたい!聞きたい!」

ベッドの上でね?
そう、呟く。

途端に、グンっと手を引かれ走り出した。

「あからさまだなぁ、お前!」

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