
僕は君を連れてゆく
第53章 ミモザイエロー
雅紀は黙りこんでしまった。
俺はコーヒーをいれて雅紀に出した。
同じように対面に座り自分もコーヒーを飲んだ。
「苦しかったろ…ずっと、そんな風に思ってて」
雅紀はコーヒーに口をつけることはなくて。
「俺は和が女だったら良かったのに、なんて思ったことは一度もない。男とか女とかそんなことじゃなくて和が、二宮和也が好きなんだよ」
「……」
「男同士だから?俺たちが男と女の恋人同士だったらこんなことで悩まないですむのか?」
「……」
「別れたいってこと?」
雅紀は俯き、髪の毛をくしゃくしゃと握り拳でテーブルを叩いた。
「ごめん、また、明日話そう。冷静になろう」
「………」
別れたい
そんなわけない。
そんなわけない。
そんなの嫌だ。
でも、雅紀にそう言わせたのは俺だ。
もし、別れを告げることがきたとしたら、それは
俺からだろうなんて思ってた。
だから、そんな言葉を告げられたときにどうやって受け止めればいいのかわからない。
ベッドに入り布団を被る。
シーンとした部屋。
全く、眠ることができない。
起きて、リビングに戻ったら雅紀がソファーで横になっていた。
「ど、して?ここで寝てるの?」
「ん…、和、泣くなよ」
止まったと思った涙はまたどんどん溢れてくる。
「雨もやんだし、デートする?」
「え?」
夜はまだまだ冷えるからと、たくさん服を着せられる。
「これも」
雅紀のグレーのマフラーをぐるぐると巻かれた。
「防寒しすぎじゃない?」
「行こう」
手を繋いで、歩き出した。
夜道はやっぱりまだまだ肌寒くて。
繋いだ手は暖かい。
別れる、ということはこの手を手放すということ。
「やっぱ、寒いね~」
鼻の頭を赤くして雅紀が白い息を吐きながらしゃべる。
「和、ごめんね」
駅が見えて明るくなってきた。
