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僕は君を連れてゆく

第57章 名前のない僕ら ―身勝手な恋心編―


「……っ…」

「…ぁ…ぅ…」


両手で顔を覆い、その指は震えていた。


俺は俺の下で泣く兄さんを見下ろしていて、
臍に吐き出した自分の欲の塊と、兄さんが吐き出した欲の塊を指でなぞった。


「…けよ…」


兄さんが小さい声でなにか言ってる。


「どけって言ってんだよっ」

聞いたことない低い声で怒鳴られた。


慌ててどいたら、震えていたのは指だけじゃなくて全身だった。

「兄さん…」


顔を覆っていた手が離れると顔を真っ赤にして泣いてる兄さんが俺を睨み付けて言った。


「…気持ちわりぃんだよ…お前…」


兄さんの腹にべっとりとくっついた精子は
兄さんが起き上がっても垂れることはなくて。

肩につけた噛み痕、鎖骨に吸い付いてつけた痕。

あばらの浮き出るその細い体はやはり、
エロかった。

それにもう一度触れたくて、手を伸ばした。

「やめろ、触んなっ」


俺の指先を叩き、怒鳴り付ける。

「兄さん、俺、」


「聞きたくない、しゃべんな」

ベットから降りようとしたけれど、足に力が入らないようですぐに座りこんでしまって。


「くそっ!なんで…」


お姉さん座りになった兄さんの白い背中。

薄い腰に俺の体はまた疼きはじめていて。

立ち上がろうとベッドに手をついた兄さんの手首を思いのままに掴み、再びベッドにその体を押し付けた。


「な、なんだ、やめ、」

「兄さん…舐めてよ…」

「やだ、そんな汚ねぇ」

「…咥えろよ」

涙を流しながら俺を咥える兄さん。


汚くたっていい。

気色悪くたっていい。

もう、俺には抑えられない。





兄さんに、欲情するんだ。








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