僕は君を連れてゆく
第58章 この手をのばして
「雅紀さん、起きて」
時計の針は6時をさしている。
もう起こさないと朝御飯食べる時間がなくなっちゃう。
掛け布団から覗く長い足。
「!!!(そうだっ!)」
足の裏をこしょばる。
「早く~!起きて~!」
こしょこしょ
足がバタバタするけど、起きる気配はない。
「もぉ~う!チュウしちゃうぞ」
やっと顔が出てきた。
「キレイな顔してる…」
そっと、頬に触れる。
「好きだよ、雅紀さん」
そういったら腕をガシっと掴まれて雅紀さんを見上げていた。
「カズ…!悪い子だ」
「だって、雅紀さん起きないんだもん!」
「カズ…」
目を閉じる。
優しく触れる唇。
手首を掴まれていたけど、俺の手のひらと絡めギュッと握られる。
優しい。
雅紀さんはすごく優しい。
こんな、俺をここに置いてくれた。
こんな、俺に仕事を与えてくれた。
「もう少し寝る」
「だめだよ~!起きなきゃ!」
雅紀さんに抱き締められながら、イチャイチャする。
「カズ~、スベスベ…」
雅紀さんは俺が痛がること、苦しくなることはさせない。
雅紀さんになら、何をされたって構わないのに。
「雅紀さん、どこ触って…あっ…」
「う~ん??なんのこと?」
俺のTシャツのなかに手を突っ込んできて、
いやらしく触ってくる。
「ぅんもぉ!ダメ!起きなきゃ!」
「カズ、顔、真っ赤!!」
「雅紀さんのせいでしょ?!もぉ!」
こんな生活を送ることが出来るなんて。
雅紀さんの優しさが俺を包んでくれる。
あの日、俺を拾ってくれたあの日。
雅紀さんが俺を拾ってくれて、本当によかった。