僕は君を連れてゆく
第58章 この手をのばして
「あ…なんか、」
「なんか、もっかいイケそう!」
「えっ?!あ、あん、やん!」
俺のなかで弾けたはずなのに、また、硬さを
取り戻した雅紀さんの。
汗でびっしょりの俺たちだけど。
求められることにこんなにも喜びを感じられるようになったのも雅紀さんのおかげ。
「んっ、ぁん、ぁん、んっ」
「カズ、顔を見せて」
漏れるあえぎ声を雅紀さんの唇で塞がれる。
雅紀さんの舌を追いかける。
雅紀さんが苦しそうに、眉間にシワを寄せたり
だんだん呼吸が荒くなってくるのが嬉しい。
「あぁ、ダメだ、」
そう言って。
奥に奥に腰を揺らしてきて。
「あぁぁぁ…」
「うっ」
凄まじい快感が頭を抜けていった。
全身が震える。
「んっ…あぁ…」
「カズ、愛してる」
汗でおでこにはりつく前髪をなでつけられる。
「カズは本当に泣き虫だ」
誰かに愛して欲しかった。
優しく名前を呼んで欲しかった。
溢れた涙を拭いて欲しかった。
「雅紀さんのせいだもん」
「そっか」
涙を舐められる。
しょっぱいや、と雅紀さんは笑った。
拾われたあの日から俺たちは始まった。
鍵を渡してくれた日。
俺は信じることにした。
どんな言葉よりも俺を信じてくれてると思ったから。
「雅紀さん」
「なぁに?」
「名前、呼んで?」
「カズ」
「はい」
「和」
「はい」
「和也」
「はいっ」
俺は、もう一度、雅紀さんの胸に飛び込んだ。
【おわり】