僕は君を連れてゆく
第59章 巡る季節のなかで
そこから俺は動くことが出来なくて。
あと、数メートルで家の玄関の前なんだけど、
母さんの顔を見たら。
やっぱり
帰ろう
背中を向けた
「和也っ!!!!!」
母さんが俺を呼んだ。
ツカツカと、サンダルの足音がして。
きっと、振り返ればすぐに母さんがいる。
でも、怖い
「おかえり」
震えるその声は母さんだった。
大好きな、大好きな母さんの声。
「ただぃま」
家のなかは、変わってなかった。
懐かしい匂いして。
ずっと温かくて大好きな雅紀さんの家の匂いとはやっぱり違う。
でも、嫌いじゃない。
落書きして怒られたテーブルはもうない。
居心地の悪くて、息苦しいこの家。
そう思ってたのに。
「和也…」
怒るとすごく怖い父さんは、小さくなってた。
「父…さん」
「すまなかった…」
頭を下げる父はますます小さく見えた。
「俊と会ったんでしょ?」
「うん…」
「和也は今、どこに?」
「恋人と暮らしてる」
「……」
「俺、気がついたときには男が好きで…なんでなんだろう?ってずっと思ってて…誰にもバレたくないけど一人で抱え込むのも出来なくて…」
「すごいわね…」
「え?」
「だから、俊に話したんだろ」
「俊しか、分かってくれる人はいないと思ったんでしょ?」
そうか
そういうことだったのか。
俺が男に興味がある、と気がついたのは父さんだったらしい。
正確にいうと、女に興味が持てない、と気づいたらしい。
アイドルを見ても女優を見てもなんの反応もしなくて。
ドラマや映画を見るとヒロインの気持ちに寄り添うことが断然、俺は多かったらしい。
今、考えるとすごく恥ずかしい。
「和也…ごめんね、私たちの言葉が足りなかったわね」
あと、数メートルで家の玄関の前なんだけど、
母さんの顔を見たら。
やっぱり
帰ろう
背中を向けた
「和也っ!!!!!」
母さんが俺を呼んだ。
ツカツカと、サンダルの足音がして。
きっと、振り返ればすぐに母さんがいる。
でも、怖い
「おかえり」
震えるその声は母さんだった。
大好きな、大好きな母さんの声。
「ただぃま」
家のなかは、変わってなかった。
懐かしい匂いして。
ずっと温かくて大好きな雅紀さんの家の匂いとはやっぱり違う。
でも、嫌いじゃない。
落書きして怒られたテーブルはもうない。
居心地の悪くて、息苦しいこの家。
そう思ってたのに。
「和也…」
怒るとすごく怖い父さんは、小さくなってた。
「父…さん」
「すまなかった…」
頭を下げる父はますます小さく見えた。
「俊と会ったんでしょ?」
「うん…」
「和也は今、どこに?」
「恋人と暮らしてる」
「……」
「俺、気がついたときには男が好きで…なんでなんだろう?ってずっと思ってて…誰にもバレたくないけど一人で抱え込むのも出来なくて…」
「すごいわね…」
「え?」
「だから、俊に話したんだろ」
「俊しか、分かってくれる人はいないと思ったんでしょ?」
そうか
そういうことだったのか。
俺が男に興味がある、と気がついたのは父さんだったらしい。
正確にいうと、女に興味が持てない、と気づいたらしい。
アイドルを見ても女優を見てもなんの反応もしなくて。
ドラマや映画を見るとヒロインの気持ちに寄り添うことが断然、俺は多かったらしい。
今、考えるとすごく恥ずかしい。
「和也…ごめんね、私たちの言葉が足りなかったわね」