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僕は君を連れてゆく

第60章 名前のない僕ら―隠した恋心編―

〈弟の間違い〉


「ぁん…じゅん…」

「イクっ…」

柔らかい体を抱き寄せてキスをして。

「超、気持ち良かったよ」と耳元で囁く。

「あたしも」

柔らかい体をそっと離す。

「ねぇ、なんで彼女作らないの?」

汗をかいた体にそのままシャツを羽織っていく。

「聞いてどうすんの?」

「んー、興味?あ!実は好きな人がいるとか?」

ズボンをはいて、床に転がったままの水のペットボトルを拾う。

「叶わない恋って辛いもんね~」

蓋を開けて水を飲む。

「じゃ!また学校で」

彼女のマンションから出て家に帰る。

午後の授業をフケて彼女のマンションに来た。

俺の中で暴れる欲望を何かにぶつけないとおかしくなりそうなんだ。

携帯で時間を確認するとまだ夜になったばかりの時間で。

兄さんの帰りと同じくらいになるだろう。

兄さんは受験のためバイトをやめて塾に行っていて帰りがずっと遅くなった。

夕飯もほとんど一緒になってない。

だけど、兄さんの成績なら塾なんていく必要ないんだけど。

ってまぁ、俺のせいだろう。

相葉センパイと兄さんの関係を疑っている俺は嫉妬に狂い兄さんを犯した。

それまでも数回、あったその行為も無理やりだったけど。

それでも、兄さんの想いは伝わってきてた。

きっと、俺と同じ。

でも、あの日から俺を見てくれない。

目を合わせていても俺の中を通り越してずっと
向こうを見ている。

兄弟だから、ずっと一緒にいられると。

兄さんだから、ずっと一緒にいられると。

そんなこと思っていたけど。

「あれ?弟くん?」

駅のホームで電車を待っていたら相葉センパイに声をかけられた。

「この時間なの?いつも?バイトしてるんだっけ?」

ニコニコと笑う爽やかな出で立ち。

「別に…」

「寂しいんでしょ?ニノがいないから」

はぁ?

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