僕は君を連れてゆく
第9章 怪盗♡サトコ
これは…夢なのか…
だけど、やけにリアルに感じるこの息遣い。
俺は…夢を見ているのか…
にしては、とっても気持ちいいんだよ。
数時間前
俺は智くんと取材を受けていた。
“メイクの嵐”
ということで、女性たちが喜びそうなたくさんの
メイク道具たちに囲まれて撮影をしていた。
智くんと言えば…
ついこの間、テレビCMで話題になった女装姿。
あれを撮影したときのことを思い出して、
いつもより、しゃべっていた。
インタビュアーが、俺に
―大野さんの女装姿、メンバーでも話題になったのではないですか?―
確かに、話題になった。
面白いことするね。
以外に似合う。って。
でも、俺はそうじゃなかった。
あのCM見たとき、マジで驚いた。
だって、可愛いんだもん。
好きな顔なんだ。
―タイプなんじゃないですか?―
そうだ、タイプだ。
って、そうじゃない。
あれは、メイクをしている、あの顔が可愛いと思っただけで、普段の智くんは、別に…
「じゃぁ、翔ちゃんのためにサトコになっちゃおうかな?」
そう言って、鏡越しに合わせた瞳。
いつもの、智くんじゃなかった。
ううん。
俺の知ってる、嵐のリーダー、大野智ではなかった。