僕は君を連れてゆく
第9章 怪盗♡サトコ
この機会をずっと、待っていた。
最近、色んなことがあった、翔ちゃん。
映画、ドラマも決まって、撮影もしている。
相変わらず、生放送のお仕事もあるし。
この夏は24時間テレビも控えている。
相当、疲れているはず。
俺でさえ…
いや、いつもとあんま変わらないけど…
とにかく、この機会を待っていたんだ。
あの、CMやったとき何か言われるだろうな、
とは思ってた。
案の定、いじられたけど…
案外、可愛かったでしょ?って聞いたら…
んなの、大野智のまんまだったよ!って…
みんなは大笑い。
でも、翔ちゃんは違った。
わかるよ。翔ちゃんの考えてることは…
ずっと、見てきたからね。
似合ってるなって思ったんだよね?
俺の女装姿、気に入ってるんだよね?
これを利用しないわけにはいかないよ。
いつからだろう?
翔ちゃんを好きになったのは。
つい最近にも思えるし、随分、昔のような気もする。
ただ、覚えてるのは、デビューする前から翔ちゃんはモテていた。
でも、翔ちゃんはそんな、バカな女どもには目もくれず目の前の仕事に集中していた。
時にそれは、痛々しくもあった。
だけど、俺はずっと見てきた。
翔ちゃんだけを。