僕は君を連れてゆく
第66章 CHUDOKU
「もう、一本ちょうだい?」
テーブルに並ぶ料理たちは相葉さんが作ってくれたもの。
美味しいご飯があれば、そりやぁ、お酒も進む。
「大丈夫?飲みすぎないでよ?」
と言いながらも、冷蔵庫に向かうために立ち上がってくれる。
酔ってないよ。
酔うわけないじゃん。
酔ったふり。
「酔ってないって~」
と言いながらグラスに残るアルコールを飲み干そうと手を伸ばしたらお皿にぶつかりお皿がカチャンと大きな音を立てた。
「あっぶないなぁ~、もう」
戻ってきた相葉さんが落ちる寸前のお皿を手に取り、俺をジロリと見た。
「ごめん、ごめん」
酔ったふり。
気がついてるんでしょ?
「なんか、テレビでも見る?」
「あ、これ…」
夜も深い時間になってきていて。
こんな時間からテレビなんて。
相葉さんも期待、してるでしょ?
俺はスマホを取り出して、時間を確認するふりをしながら電源をおとした。
「ニノ…」
「ん?」
相葉さんはテレビのボリュームを下げた。
そして、スマホを手にして明日は何時だっけ?なんて言ってる。
「相葉さん?」
「ん?なぁに?」
こっち、見て。
相葉さんのスマホを横取りして電源を落とす。
「明日、起きれないじゃん」
俺に肩に腕を回す。
明日は俺も相葉さんも午後からでしょ。
回された腕に自分の腕を絡め手を繋ぐ。
「ニノ…」
「ん?」
酔ったふり。
してあげてるんだから
早く。
「いい?」
「ダメって言ってもするくせにっ」
目と目が合って
すぐにそらされた。
「期待してたくせに」
頭をくしゃりと撫でられその掌が俺の頬にうつる。
ゆっくり指が俺の耳に触れる。
相葉さんのくちづけを期待して
俺は目を閉じる。
相葉さんが、
そっと、部屋の電気を消す。
おわり