僕は君を連れてゆく
第72章 可愛いの秘密
バイトが終わり、家に帰ってくると
俺を迎えてくれるのは母親、ではなくて。
「和くん、おかえり」
「ただいま」
玄関から続くリビングのドアは閉まったままだけど
ご飯もうすぐ出来るよー、と部屋中に響く声で言う。
靴を脱いでそのまま自分の部屋に入り鞄を置く。
楽な格好に着替えてリビングへ向かう。
玄関を開ける前から鼻をくすぐるいい香りがしてて。
お腹の虫がぐぅ~っと鳴った。
「腹へった~」
ドアを開けるとその香りの正体が明らかになった。
「今日はカレーだよ」
「マジで?」
「あ、手洗った?」
「あっ!」
「ほら、ほら、そっちが先です」
追い出されちゃったので仕方ない。
手を洗ってうがいして。
配膳くらいは手伝わなきゃと思ったけれど
戻ったらすでに終わっていた。
グラスに麦茶を注いでるところだった。
「早く食べよう~」
二人で手をあわせて
「「いただきまぁす」」
「どうかな?」
上目遣いで俺を見る。
「うまいよ」
これは本当に本当。
「よかったぁ~」
俺のその一言を聞いてから潤もスプーンを手にとった。