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僕は君を連れてゆく

第74章 今夜、君を

相葉×大野


「24日、何してます?」

「なんだよ、それ。何が聞きたいんだよ?」

「時間あるなら、付き合ってくださいよ」

「なに?お前、独りなの?」

11月の頭に、声をかけて予定をおさえた。

誰にも譲らない。

やっと、俺にまわってきたんだ。


この部署に配属されて、二年。
ずっと、下にくっついていた。
抜けてるようで、隙がありそうなのに
掴めなくて。

気になりだしたら、もう、抜け出せなくなっていた。



「相葉、いい店、知ってるなぁ~」

当たり前だ。
ウィスキーが好きってのは調べてある。

「ウィスキー好きですか?」

「こんな店あったんだなぁ~」

グラスのなかで氷がキラキラと輝いている。
それが先輩の瞳に当たるから、潤んでるように見えて…

「お酒、強くないでしょ?それくらいにした方が…」

お酒が好きだけど、飲むと、舌ったらずになってく。

そして、どんどん甘えてくるんだ。

「いつも、相葉には酒の席で迷惑かけちゃってるな~」

そう。
毎回、みんなに飲まされてベロベロに酔う先輩を介抱してた。

出来れば避けたい、酔った年上の介抱。
俺はいつも、みんなに頼まれる形で先輩をタクシーに乗せて自宅まで送った。

「俺だって、分かってたんですか?」

「相葉は、いつも、いい匂いするから」

「匂い?」

「うん、いつもお前、いい匂いするんだよなぁ」

もう、膝枕になりそうな先輩。
背中に腕を回して起こそうとしたら、向きを変え俺の首筋に顔を寄せてきた。

「ここからするんだよっ」

あぁ、先輩。
貴方って人は。
俺を送り狼にさせるつもりだね?

「先輩?大野先輩?」

「ん?」

酔って、赤らんだ瞼に潤む瞳が俺をとらえる。

「家、来ます?」

「お前の家?」

いつも、先輩の自宅に送る俺が、自宅に誘う。
分かってるかな?

「行く」

と言って、瞬きをした。




タクシーの中で先輩の手を握った。

冷たい指先が微かに動いた。

伝われ

伝われ


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