僕は君を連れてゆく
第74章 今夜、君を
「なんですか?」
俺の前にはリボンで口を結んだグリーンの袋。
先輩は俯いたままで。何も言わない。
先輩の体はとても綺麗だった。
割れた腹筋、しなやかなふくらはぎ。
細いウエストも長い指も。
すべてが。
それを思い出しただけでイケそうだ。
先輩より早く目覚めた俺は、先輩の寝顔をしばらく眺めていた。
規則的な寝息は心地がよくて。
ぬくもりが優しかった。
これからもそれが続くなんて。
次の週末俺は先輩に呼び出されていた。それがこのグリーンの袋だ。
「誕生日だったんだろ?」
「え?」
誕生日の話なんてしてないのになんで知ってるんだろう。
「お前の…、相葉と別れて次の日、みんなに祝われたろ?」
そういえば、そんなこともあったような…
先輩とのことで浮かれてて全然記憶にない。
「食事とか誘われてたけど…」
「…?」
また、黙ってしまった先輩。
「行ったのかよ…」
「行くって?」
「パーティーしましょう、って言われてたじゃん!行ったのかよ?」
妬いてる…
嫉妬してくれてるんだ…
「行かないよ、もう、俺、頭のなか先輩でいっぱいだもん」
少しだけ頭をあげて俺を見る。
上目遣いになってしまうその瞳。
「お、遅くなったけど、お誕生日おめでとう…」
ずいっと袋を俺に押し付けるようにする。
「ありがとう…開けていい?」
中には手袋が入っていた。
「電車通勤だから使えるだろ」
「大切にする」
「うん…」
「先輩…、俺はずっと先輩だけだよ」
「うん…」
「こっち見て?」
抱き寄せてキスした。
深く、深く。
ずっと、そばにいたい。
やっと、手に入れたんだ。
end