僕は君を連れてゆく
第74章 今夜、君を
マンションについて部屋まで無言だった。
「連れてけよ…」と言った先輩の言葉。
それは、つまり、そういうことだよね?
部屋のドアをあけて先輩に入るように促す。
「真っ直ぐ行ったドアを開けたらリビングなんで」
靴を脱いで真っ直ぐ歩いてく背中を見つめる。
もう、逃げられないよ?
ドアの鍵をしめた。
リビングに入りいつもなら電気をつけるけど。
どうしたらいいか、迷っている
突っ立ったままの先輩の背中を抱き締めた。
「あ、いば…」
「いいんだよね?」
回した腕に手をそえてくれる。
その震える指と冷たい耳。
耳に唇を寄せて這わす。
「っう…」
と、漏らす声に俺のからだは熱くなる。
手をひいてベットに横たえる。
見つめると目を閉じてくれた。
唇を数回重ねて、唇を舐める。
わずかに開いた口の中に舌を滑り込ませると、答えてくれた。
「相葉…」
濡れた唇が俺の名前を呼ぶ。
「好きです…初めて会ったときから」
先輩は眉毛を下げて優しく笑って頷いた。
「ありがとう…」
それから、先輩を抱いた。
先輩のなかはキツくて、温かくて。
最高だった。
横で眠る先輩の顔は幼い。
「可愛い顔」
おでこに口づけを落とす。
先輩が笑ったような気がした。
「俺も寝よう」
先輩を引き寄せて俺も目を閉じた。