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喫茶くろねこ

第16章 「らしさ」って何だろう?

「うひゃ?」

滅多に人を褒めないマスターに「上出来だ」なんて言われてびっくりして、つい変な声が出てしまった僕は、周りの客に変な顔で見られてしまった。

…びっくりして変な声出ちゃったじゃないですか!

周りの人に聞かれないよう、テレパシーでマスターにだけ話しかける。

『何にビックリしたのか、私にはさっぱり分からん』

滅多に僕のこと褒めないのに、突然「上出来だ」とかさ~。マスター、何か変なものでも食べました?

『上出来だ、ぐらいの言い方で“褒めた”ことになるのか。相変わらず、自分に対する評価の低いヤツだな。というか、驚いてないで、もっと素直に喜べないのか』

さっきの話、喜ぶ要素、ありました?結局“らしさ”が何かは分からないままですし、なんか僕の中では何も解決してないんですけど。

『そうか?自分の好きなことと、自分のやるべきことが見えてて、とにかく毎日をつつがなく生きる、ってのが言えたら、それなりに人生は回っていくもんじゃないのか』

…マスターは猫だから、人生は歩んでないですよね?

『人生じゃなくて猫生、とでも言いたいのか。いいんだよ、そんな細かいとこ突っ込まなくても』

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