無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

部屋に戻って卒論の続きに取りかかる。

………。…………。

「なぁ、虎太郎？ちょっとさ、”伸び”してみて」
「のび？」
「あのほら、前脚を突き出してグーッとこうやるやつ」
「今は別にいいにゃ」
「頼むから見せてよ…」
「知らんにゃ」

そう言うと後ろ足で耳の後ろを掻く虎太郎。
おぉっ、コレもいい！

「ちょっとそのまま！」

すかさず写真を撮ろうとするが、撮る前にやめてしまう。

「あぁー…」
「うるさいにゃ」

虎太郎はめんどくさそうに丸くなり顔を隠して寝始めた。
仕方なく続きを書いていると、ケータイが鳴った。メールの着信音。開くと、珍しく母からだった。しかも３通も。


「title:お久しぶり。今年で卒業だね！
本文：（このメールに本文はありません）」

「title:卒業後の進路は決まったの？
本文：（このメールに本文はありません）」

「title:たまには連絡くださいね。母より
本文：（このメールに本文はありません）」


…なぜうちの母親はいつもタイトルのところにメール文をいれて本文を空欄で送ってくるのか。おばちゃんあるあるなのか…。本文のところに書いてくれれば１通で済む内容なのに…。

進路かぁ…うーん、卒業までには決めないとなぁ…。とりあえず何か返信しとくか。

「title:母さんへ
本文：今は卒論に取り組んでいます。就活も頑張っていますがまだ内定はありません」

うーん。内定ないとか正直に書いちゃうと心配するかな？
どうしよう…。

「title:母さんへ
本文：今は卒論に取り組んでいます。卒業後の進路もいろいろ検討中です。」

送信。